2011年02月19日
元ホスト 献身介護 ヘルパー1年生「仕事細やか」
認知症のお年寄りが集まるグループホームでヘルパーをする鉢金(はちかね)祐太さん(24)は、昨春まではホストだった。酒の飲み過ぎで体を壊し、稼いだカネはパチンコで消えた。むなしさを覚え、探し求めた新たな居場所。一歩を踏み出すきっかけになったのは、疎遠だった母親(44)が見せた高齢者をいたわる姿だった。 鉢金さんは昨年十月から、川崎市幸区のグループホーム「第二バナナ園」で働く。お年寄りの食事やトイレの介助、掃除、買い物と休む間がない。「試行錯誤の毎日」と言う鉢金さんだが、介護歴八年の大浦勝子さん(72)は「いつも笑顔で利用者さんに人気があるし、仕事が細やか」とほほ笑む。
調理師専門学校を中退後、十八歳の時に東京・新宿駅東口でスカウトされ、「試しに」と歌舞伎町のホストの世界に飛び込んだ。アッシュ(灰)色の長い付け毛を逆立て、純白のスーツに身を包み、真夜中の午前二時に出勤。昼すぎまで浴びるように飲んでは吐く毎日だった。
週に二十五万円を得ることもあった。家族がカネに困ったことがあり、「酒をおいしいと思ったことなんてない。おカネのことしか考えなかった」。 しかし、ストレスから、稼ぎのほとんどをパチンコで浪費。だらだらした生活は五年続き、酒の飲み過ぎで食べても吐いてしまう。「抜け出したくても、どこへ行けばいいのか分からなかった」 昨年五月、疎遠だった母親と一緒に外出する機会があった。体調を崩した高齢の女性が路上に倒れていた。どうしようかと悩んでいると、母親は女性を軽々と抱き起こし、自宅に送り届けた。体は小さいのに優しく、たくましい母。仕事はケアマネジャーだった。
道が見えた。「母と同じ道を歩もう」。福祉の世界で働くことを決め、六月から一カ月間、専門学校で学び、七月にはホームヘルパー二級の国家資格を取得した。
「寝たきりの人が笑ってくれるとうれしい。認知症の方の命を預かる仕事だと思っている」と張り切るが、先輩から「やりすぎ」とたしなめられることも。「すべてをしてあげるのではなく、お年寄りができないことを手助けするのがヘルパーだから」 自己満足ではいけない。鉢金さんは「先輩のように仕事ができるようになりたい。勉強して、もっと経験も積みたい」